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アリスと魔王 第20話





まだ、日の昇らないうちに部屋を出て酒場でコーヒーを頼んでゆっくりしているとミシェルがやって来た。

「朝、早いんですね」

「昔っから早起きして鍛練するのが日課になってたから起きちゃうのよね」

「今日もされたんですか?」

「軽く素振りしたくらいよ」

「熱心ですね、どうしてそこまで強くなろうと思われたんですか?」

「大した理由なんて無いわよ。
一人で旅に出るのが夢だったから。
護身術程度にしか思ってなかったけど」

「けど?」

自分でも思う、それにしたって毎日毎日よくやるもんだ。
それだけじゃない。

「いやだったのよ、自分の人生が思い通りになんないのが。
だから強くなって取り戻したかったんだと思う」

「見事に取り戻しましたね」

ミシェルは自然に笑って言う

「ま、ウェイトレスがいやんなっただけよ」

私も笑って締めくくった。

「ミシェルはなんでウェインと旅してんの?」

何となく興味本意で聞いてみる。



「私はウェゲナー家に仕える執事の娘なんです。
ウェイン様には姉がいるのですが、その方がウェイン様が王都を抜け出して旅に出ようとしていることを見抜いて私に

(弟のお守りを頼む)

っと頼まれたんです。
こっそり抜け出したのに私に追い付かれたウェイン様も最初は良い顔をしなかったんですが、お姉様の言い付けで来ましたと言ったら渋々承諾されました」

そう言って可笑しそうに笑っている。

「アイツ姉に頭上がんないんだ?」

「ウェイン様も優秀なのですが、アネイラ様はさらに飛び抜けた才能をお持ちでして、ウェイン様は一度も勝ったことがないんです」

可笑しそうに笑っている。

女性に遅れはとらない、って言ってたのはコンプレックスだったわけね。

そう言えば武闘大会の決勝戦でも嫌な人を思い出すとか言ってたっけ?

あれは姉のことだったわけね。

「なんでアイツ抜け出したりなんかしたの?」

「ウェイン様は妙に行動力のある方なんです。
元々、王都の外に興味をお持ちでした。
そのうえ、貴族として人の上に立つのがどういう事かも心得ています。

好き勝手自由に生きたいとまでは思っていないのですが、自由が効くのは今だけだと思い、意を決して誰にも言うことなく旅支度を整えてひっそりと旅立たれました」

へー、なかなか胆の座った奴だ。

「でも、姉さんにはバレバレだったんだ」

「そうですね、アネイラ様にウェイン様が旅に出ようとしていると聞かされた時は私はまさかと思いましたが。
アネイラ様はお見通しでした。
ウェイン様に落ち度があったと言うよりも、アネイラ様の洞察力が凄いです」

なるほど、勝てない姉か。
コンプレックスになるわけだ。


「アネイラ様は私と同い年で小さい頃からよく一緒に遊びました。
本当に優秀な方で、もう既にウェゲナー家の家督を継がれた程の方なのです。

小さい頃から私も剣の稽古にもお付き合いしていて、それで私もそれなりに剣が扱えるようになったんですよ」

「それでお姉さんはウェインのことをよく知っていて、腕も立つあなたにお守りを頼んだってわけね」

「おはよう、楽しそうだな」

ウェインが降りてきた。

「おはようございます」

「おはよ」

「なんの話だ?」

「あんたの姉さんの話よ」

「なっ!まじかっ!」

顔が強張った、良い反応だ。

「ミシェル、なんでそんな話を?」

ミシェルはクスクス笑いながら

「身の上話になりましたので、それに一緒に王都へ向かうならアリスさんも会うことになると思ったので話しても問題ないかと」

完璧な言い訳だ。

「まぁ、そうだな」

本当にコンプレックスらしい。

顔がひきつっている。

「おはよう!アリスねーちゃん!」

「おはよう皆さん」

ダナンさん達も降りてきた。

皆で食卓を囲んだ、7人だとかなりわいわいとして楽しい朝食になった。

そんな食事もひとしきり済んだとき。

「王都はここからずっと北へ海沿いに進み一日に40キロ進んだとしても10日以上かかる場所だ。
因みに、魔族の包囲網は王都から半径50キロ程はある。
そのなかに入れば攻撃を受ける。
王都に一番近い街は2日程の距離にあるグランシトだ。
ダナンさん達は出来るならこのグランシトまでお願いしたいのですが」

「もちろん、喜んでお供しますよ!
グランシトまでの間には大きな街はありますか?
お恥ずかしながら、ここより北には魔物が増えるので余り行きませんので。
行商と言うのに知らんのです」

へー、北に行くと魔物が増えるんだ。

「二つ、そんなに大きくはないが町があります」

「ふむ、魔物はウェインさん達がいるので問題無いですし。
食料もとりあえず10日分確保しておけば大丈夫そうですね」

「北の方が魔物が多いのは王都のせいなの?」

「そうだ、魔物は生命エネルギーを取り込んで生きている。
魔族はそれを垂れ流しているから、一緒にいるだけで喰うに困らない。
その分、魔族にこき遣われる事になるみたいだがな」

ふーん

「魔族と魔物の違いは?」

「質問の多い奴だな」

知らないんだから仕方ない。

「見れば分かるが、魔族は人の形をしてる。
魔物は姿が様々だ。
まぁ、魔物の中にも人の姿をしている奴もいるんだけどな。
|吸血鬼《ヴァンパイア》みたいに」

「じゃあ、答えになってないじゃん!」

「うるさい奴だな!
俺だって学者じゃないんだから詳しく学術的に説明なんてできねぇよ!」

「じゃあ知らないって言いなさいよ!」

「知ってること教えてやっただろ!」

「まぁまぁ、お二人さん。
その辺にして買い出しに行こう。
話は馬車のなかでも出来る」

ダナンさんが見かねて仲裁する。

ミシェルはクスクスしながら見ている。

エレンとエレナは少しひいていた。

子供の前で恥ずかしい。

ウェインも同じく子供達を見てばつが悪そうだ。

「そ、そうね。
食事も終わったし、出発しましょうか」

私達はギルドを後にした。

食料も買い込んで。

ダナンさんは行商用に闘都の綺麗な反物や調味料等を仕入れていた。


東門につくとデカイ鉄格子が全開に開いていた。

最初に入ってきたのは西門だったので来たときと反対の門から出ることになった。

大きなアーチの門を見上げながら潜った。

なんだか感慨深いな・・・

この町に来たときはほとんど無一文だったのに、出るときは一財産築いてしまうとは思いもしなかった。

面白い町だった。

私は少しずつ小さくなる闘都をぼんやりと眺めていた。


冒険の長い道のりが始まったような気がする。







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